食堂、居酒屋、キャバクラ、ガールズバー、呼び方は様々ですが、お客様に対し酒類や料理を提供する以上「飲食店」となり、管轄の保健所に申請し「飲食店営業許可」を取らなければなりません。
まずはこの「飲食店営業許可」についてご説明します。
このサイトでは飲食店・キャバクラ・ガールズバーに関する各種届出や申請について説明しますが、必要な書類や要件などは都道府県や市区町村の条例、各役所の対応等により違いがあります。
開店の前に所轄の保健所や警察などに、事前の問い合わせをしてください。
もちろん当事務所はこれらの手続きの代行を業としておりますので、どうぞお気軽にご相談下さい。
飲食店営業許可の取得
飲食店を開店する場合、都道府県知事(市町村長の場合もあります。)の営業許可を受ける必要があり、実際の申請の受け付け窓口は、各地の保健所となります。
また、飲食店営業許可を取得するためには、各都道府県等が定めた施設基準に合致した施設を作らなければなりません。
飲食店営業許可を取るための前提条件として、食品衛生責任者の資格を持つ人が必要です。経営者は、自らが食品衛生責任者となるか、従業員の中から食品衛生責任者1人出すかを決める必要があります。
食品衛生責任者の資格とは、栄養士、調理師などの有資格者ですが、それらの資格がなくても、食品衛生責任者の養成講習会を受講することで、受講した人も食品衛生責任者になることができます。そのため、栄養士、調理師などの有資格者がいないお店の場合、講習会を受講するとよいでしょう。
どこで、受講したらよいかは、開店を予定している所轄の保健所や食品衛生協会に問い合わせをして下さい。
飲食店営業許可の取得までの流れ
窓口は営業場所を管轄する保健所等です。
・営業内容
・施設基準
申請から許可書の発行まで、約7日(土、日、祝日を除く)
程度を要します。申請は日程に余裕をもって行いましょう。
[必要な書類]
①営業許可申請書(図面添付)
②許可申請手数料(飲食店営業は16,300円※仙台市)
③食品衛生責任者の資格を証明するもの
食品衛生責任者手帳、調理師免許、栄養士免許など)
※資格のない方は、食品衛生責任者養成講習の受講手続が
必要です(別途講習会受講料が必要です)
④水質検査成績書(井戸水の場合)
担当者と検査日程の打ち合わせをします。
従事者は全員検便を実施してください。
申請者あるいは代理の方の立ち合いが必要です。
許可取得後
・営業車住所・氏名・屋号、食品衛生責任者、施設設備などに変更があったときは、
変更届を提出してください。
(営業者が代わるとき、施設が移転するとき、施設を大きく変えるときは、新たな許可の取得が必要です。)
・廃業(閉店)したときは、10日以内に
廃業届(許可書添付)を提出してください。
・
祭事等において、店先等に臨時に出店する場合は、別途 仮設営業許可が必要です。
事前にご相談ください。
工事着工前の段階で管轄の保健所に相談。完成・検査後、許可証が交付されることになります。
事前相談
施設の工事着工前、施設の設計図等を持参の上で各保健所に相談します。
基準に適合しない部分があれば、そこで指導をしてもらえます。窓口はお店の所在地を所管する保健所となります。
営業許可申請書類の提出
申請書類を作成し、食品衛生責任者を決定します。なお、申請書類等は施設工事完成予定日の10日くらい前までに提出し、問題がなければ受理となります。
施設完成の確認検査
完成した施設が基準に適合しているかを検査されます。施設の基準は、都道府県等ごとに条例で規定されています。
飲食物を提供する為、衛生的である事が大前提です。施設が不潔な場所に位置していないか、施設の周囲は清掃しやすく排水がよいか、また、施設内は清潔で衛生に保たれているかなどが検査されます。
施設の検査の際は、営業される経営者が立ち会い下さい。
なお、施設基準適合確認後、営業許可書を作成してもらえますが、交付までには約1週間程度かかるのが一般的です。交付日は、検査の際に検査担当者に確認しましょう。指摘された事項があれば必ず改善し、再検査を受けてください。
営業許可の交付
営業許可書は約1週間後に交付されます。
飲食店としての営業開始
食品衛生責任者の名札は見やすい場所に掲示して下さい。
この段階まで終了して初めて「飲食店が営業できる」ことになります。
キャバクラ・ガールズバー等を営業する場合は、風俗営業の許可や深夜酒類の営業の届出がさらに必要になります。
飲食店の営業許可申請に必要なもの
◆地域、業種、業態により、手数料は異なります。
以下の手数料と書類を提出します。ただし、各保健所によって異なることがありますので、お店を開店する予定の保健所に、事前に相談したほうが良いでしょう。
営業許可申請手数料
各都道府県の条例及び、業種、業態により、金額が異なります。飲食店営業を新規に営業する場合、申請手数料として1万6000円から1万8000円程度かかります。仙台市で飲食店営業を新規に行う場合の申請手数料は1万6300円です。
≪参考:仙台市の飲食業関係手数料≫
必要書類
①営業許可申請書
②営業設備の大要 2通
③営業設備の配置図 2通
④食品衛生責任者の資格を証明するもの
(調理師・栄養士等である場合、免許状となります。養成講習会受講者の場合、食品衛生責任者手帳となります)
⑤水質検査成績書
(調理場等の使用水が、ビルの受水槽を通っている又は井戸水使用の場合必要です)
⑥登記事項証明書
(個人ではなく、法人でお店を営業する場合、必要となります)
営業許可申請書の書き方
・日付(請年月日を記入)
・住所(住民票の記載どおり記入。アパート・マンションの場合、名称、部屋番号も記載。)
・氏名(住民票の記載どおり記入。)
・営業所の所在地(賃貸契約書どおり記入。集合ビルの場合、ビルの名称、階層・号室も記載。)
飲食店営業許可の施設基準
宮城県では平成12年3月28日付けで、食品衛生法施行条例(宮城県条例第33号)が交付されました。同条例第4条に定められた飲食店営業の施設基準の大要は下記のとおりです。 食品衛生の安全確保に配慮した施設を設計・施工することが必要です。
(自治体によって異なる場合があります)
1.調理場等の共通基準
区画 |
他の場所と区画してあること⇒業種別基準 |
面積 |
計画取扱数量に応じた広さを有し、他の用途に併用しないこと(面積規定はありません) |
床 |
コンクリート、タイル張り又は厚板張り等堅牢で清掃しやすいこと |
壁・天井 |
すき間がなく、平滑であること 塗装は明るい色で仕上げられていること |
換気 |
衛生上十分な能力のある換気設備を設けていること |
採光・照明 |
自然光線を十分取り入れ、さらに衛生上必要な照明を設置してあること |
便所 |
従業者用便所並びに客席がある場合は客用の便所を設置してあること(使用に便利な位置にある場合は共用可) |
手洗い設備 |
次の3ヵ所に流水式の手洗い設備と手指消毒設備を設置してあること
①調理場 ②客席 ③便所
|
食器戸棚 |
食器がすべて収納できる戸の閉まる戸棚を設置すること |
冷蔵庫 |
計画取扱数量に応じた大きさで、外部から見える温度計(隔測温度計)を設置してあること |
窓の網戸 |
・調理場の窓に取り付けてあること
・開放式(カウンター式)調理場の場合は、客席の窓に取り付けてあること
|
ゴミ容器 |
ふた付きのポリバケツなど耐水性で、清掃しやすい構造のもの |
まな板 |
合成樹脂又は合成ゴム製などを用途に応じて使い分けること |
使用水 |
①上水道の場合
特に提出が必要なものはありません
②簡易給水施設の場合
1年に1回以上の受水槽等の清掃点検がビルの管理者義務付けられていますが、成績書を提出する必要はありません
③井戸水の場合
塩素殺菌装置を設置し、飲用適否の水質検査(26項目)を受け、水質検査成績書の写しを提出して下さい
|
2.飲食店業種基準
①区画
調理場(又は製造場)は閉鎖式(完全区画)が原則です。ただし、調理場(又は製造場)と客席(又は販売場)が隣接し、かつ衛生上支障がない場合〔客席が屋内にあり、かつ防虫、防鼠、防塵対策が講じられている場合〕は、開放式(カウンター式)調理場で差し支えありません。
調理場と客席(販売場) |
客席 |
例 |
閉鎖式 |
開放式 |
隣接している |
屋内 |
一般飲食店、寿司屋、中華食堂、レストラン、スナック、バー等 |
〇 |
〇 |
隣接している |
屋外 |
ビヤガーデン、客席がテラスにある飲食店等 |
〇 |
× |
隣接していない |
屋内 |
ホテル・宴会場の主厨房・割烹等 |
〇 |
× |
隣接していない |
屋外 |
道路沿いの焼鳥販売専門店、弁当販売専門店等 |
〇 |
× |
なお、他の物品購入目的で、多数の利用客が出入りする下記の施設については、条件付きで開放式(カウンター式)調理場とすることができます。〔平成10年1月13日付宮城県環境生活部長通知〕
(1)スーパー、デパート等の「飲食店街」であって、通路に面した客席が区画されていない場合
条件:スーパー、デパート等の出入口に自動開閉扉(自閉式でも可)が設けられていること
(2)コンビニエンスストア
条件:(a)施設の出入口に自動開閉扉(自閉式でも可)を設けること
(b)おでん鍋に蓋を設けること
②開放式(カウンター式)調理場の条件
高さ |
床から一定の高さを有すること |
調理場出入口 |
カウンタードア等(仕切り戸)を設けること
(床と仕切りの間に空間がないように設置)
|
③構造(弁当・仕出し製造業及び旅館・ホテル営業の調理場については、次の構造が必要です)
弁当・仕出し製造業 |
原料の保管、食品の詰合せ及び放冷のための場所を設けること |
旅館・ホテル営業 |
原料の保管、配膳及び放冷のための場所を設けること |
3.その他
検便の実施 |
新規営業開始前及び定期的に食品衛生協会等で受検すること |
旅館・ホテル営業 |
1施設に1名配置すること
資格取得の方法:食品衛生責任者講習会を受講すること(他の自治体で受講した方及び調理師、栄養士等の場合は受講免除)
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飲食業の労務管理
飲食業はその業務の性質上、当然ながら、土日祝日は休み(週休二日制)、労働時間は1日8時間、休憩時間60分という固定的な勤務体系を維持して働き続けることは非常に困難です。
しかし、業種の特性上、法律は守れないのはしょうがないなどとは当然言えません。
また、飲食業は、一般的に拘束時間が長くなりがちで、休みが非常に少ない等の理由で離職率が非常に高い業種であると言われています。
募集をしても応募が少ない、ほとんど来ない!といったお悩みをお持ちであれば、適正な労務管理を行い、働きやすい職場作りを行うことが、離職者を減らし、優秀な人材の確保や、更に新たなスタッフの獲得などが可能となるのではないでしょうか。
従業員の加入する保険制度について
雇用保険と労災保険(一般に労働保険といいます。)は個人事業、法人問わず従業員を雇用したら、加入する義務があります。
ただし、雇用保険は、週の労働時間が20時間以上で、1か月以上雇用見込みがある場合のみ加入義務が発生します。(昼間部の学生は労働時間にかかわらず加入義務がありません。)
健康保険と厚生年金保険(いわゆる社会保険)は、飲食業の場合は、法人のみ加入義務が発生します。(個人事業の場合は従業員が何人いても、社会保険の加入の義務がありません。)
法人の場合、労働時間が正社員(フルタイム)の4分の3以上勤務している場合は、パート・アルバイトについても、社会保険の加入義務があります。
目安としては、週の労働時間が30時間(フルタイムの週の労働時間が40時間)、または33時間(フルタイムの週の労働時間が44時間)となります。
就業規則
労働基準法では、就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する事業場については、就業規則の作成と、労働基準監督署への届け出の義務が規定されています。
元々、従業員が10人未満、複数店舗があっても、1店舗ごとの人数がすべて10人未満であれば、就業規則の作成、届け出義務はありません。
しかし、就業規則があれば、従業員とトラブル(解雇や退職、休職等)が発生した場合でも、比較的スムーズに対応できる場合も多いと思われます。
また、職場の様々なルール作りや、後述する助成金の申請等でも必要になるため、作成しておくことをお勧めします。
変形労働時間制
労働基準法では、1日8時間、週40時間(特例対象なら44時間)以上の労働を原則禁止しています。
時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定)を労働基準監督署に届け出れば、割増賃金を支払うことが前提で、一定の時間、時間外労働を行うことが可能です。
飲食業では、1か月単位の変形労働時間制を採用している事業所が比較的多いと思われます。
1か月単位の変形労働時間制は、原則として、1か月を平均して1週間あたりの労働時間を40時間(特例対象なら44時間)以内となるように、労働日および労働日ごとの労働時間を設定します。例えば、暦日が31日の月の労働時間の上限は、177.1時間となり、この上限の範囲内でシフトを作成すれば、労働時間が特定の日に8時間を超えたり、特定の週に40(44)時間を超えたりすることが可能になります。
一般的に長時間労働で休みが少なくなりがちな飲食業に対応した制度と言えるでしょう。
1か月単位の変形労働時間制を採用するには、その内容について労使協定を作成、または就業規則に規定して労働基準監督署へ届け出る必要があります。
年次有給休暇
労働基準法では、入社6か月を継続勤務した場合、原則として、10日以上の年次有給休暇を与える必要があると規定しています。
この規定は、パートアルバイトにも適用され、週の勤務日数に比例した年次有給休暇を付与する義務を負います。
週の勤務日数が4日の場合は、半年継続勤務で7日、たとえ週の勤務日数が1日であっても、半年間継続勤務した場合は、1日の年次有給休暇を付与する義務を負います。
パートアルバイトは年次有給休暇を付与しないということは当然通りませんし、退職時に大量の年次有給休暇を請求されたりしないように、日ごろから、計画的に付与するように心がけましょう。
固定残業代
飲食業は、どうしても長時間労働、時間外労働が発生しがちです。
固定残業代は、毎月発生する時間外労働があり、その時間がある程度見込まれる場合に、その時間外労働に相当する割増賃金を、毎月固定した額を支給することにより、実際に時間外労働が発生した場合に、その固定残業費に相当する時間や金額まで、割増賃金を支払う必要はありません。
しかし、固定残業費を採用するためには、就業規則に固定残業費について規定した上で、個別の労働契約書等により、固定残業費の額および固定残業費で対応できる時間を明示する必要があります。
「うちは残業代込みの給与だから」というお話しを聞くことがありますが、公の場にでてしまったら、通用しないとお考え下さい。
名ばかり管理職
労働基準法には、管理監督者という規定があり、法律上の労働時間等の制限を受けませんが、管理監督者に当てはまるかどうかは店長等の役職名ではなく、その従業員の職務内容、責任と権限、勤務態様、待遇を踏まえて事態により判断されます。
これらに当てはまらない人は、店舗で店長等の管理職とされていても、残業手当や、休日出勤手当が必要です。
●経営者と一体的な立場で仕事をしている。(経営に携わっている。)
●出勤、退社や勤務時間について厳格な制限を受けていない。
●その地位にふさわしい待遇(給与等)を受けている。(部下が残業をしても給与が逆転しない。)
外国人労働者
近年、人手不足を外国人労働者を採用することで運営しているお店も多いでしょうが、外国人労働者を働かせる場合は、日本で働く許可を受けているのか確認する必要があります。
旅行目的や不法滞在者を雇用することは犯罪です。十分にご注意ください。
また、外国人留学生等は、就労目的で日本に在留しているわけではありませんが、資格外活動の許可を得ることで、就労することが可能です。
しかし、留学生の場合は、資格外活動許可を受けることで勤務先や時間帯を特定せずにはたらくことができますが、1週28時間を超えて働かせることはできません。
資格外活動許可を取らなかったり、1週28時間を超えて就労させると不法就労になりますのでご注意ください。
助成金
従業員を雇用している場合、雇用助成金を受給できる可能性があります。
助成金のほとんどは、個人事業、法人を問わず受給することができます。
受給例
有期雇用社員やパートアルバイトを正社員に転換した。
・・・・キャリアアップ助成金 最大 72万円/1人(最大20人まで)
男性社員に子供が生まれたため、休みを含めて5日間の育児休業を取得させた。
・・・・出生時両立支援助成金 最大 72万円
生産性向上に資する人事評価制度および賃金制度を整備した。
・・・・人事評価改善等助成金 導入50万円 目標達成 80万円
※上記の助成金は、受給に関して他にも要件があります。また、雇用助成金は上記以外にもございますので、詳しくはお問い合わせください。